「鷺と雪」北村薫氏著
昭和、第二次世界大戦前の頃が舞台のお話です。お嬢様である主人公視点で語られるさまざまな出来事…というところでしょうか。小さな謎あり、人生観あり、時代の流れあり、うまくからめられた時事といい、淡々とした決して派手ではない語り口ながら引き込まれずにはいられません。
北村氏らしい着眼点と巧みなリードで物語は進んでいきます。「スキップ」シリーズや「空飛ぶ馬」シリーズがお好きな方でしたらこちらもお気に召すと思います。(^^)
また、物語のキーパーソンであるベッキーさんというキャラクターがとても魅力的なんですよ。お嬢様お付きの、当事は珍しい女性の運転手さんです。英知に富み思慮深く、頼りがいがある。こんなお姉さまがいたら憧れ慕わずにはいられないでしょうね。(笑)
こちらは「街の灯」「玻璃の天」に続く、シリーズの3作目となります。全て1冊に3話の読みきり短編集というスタイルをとっていますのでどれから読んでも大丈夫。
なのですが、やはりできれば順番どおりに楽しんでいただきたい…と勝手に(笑)思ってしまいます。最も美味しくいただける方法でじっくりと味わっていただきたい作品群なのです。
たぶんこれがシリーズ最後の1冊なんだろうな…と思われる内容で、読み手としては残念なところです。だってもっと読みたい…作者さえその気になってくれればその後の展開も描けそうですし……
でもそれをしたら野暮なのかもしれません。
最後の1行を読み終わったとき、ざわりと鳥肌が立ちました。
PR